コステロについて書くのは簡単じゃない。
つーか、お手上げ。
デビューから45年。
通算33枚のアルバムなどを通じて、
パンク、ロックンロール、ニューウェーブ、カントリー、
クラシック、ジャズ、ヒップホップなど、
さまざまなジャンルへの挑戦を続けておられ、
そのキャリアはボクごときが語れる範疇にない。
振り幅が広いコステロの音楽性は時として、
「無軌道」「節操がない」などと批判されることがある。
一応ファンの端くれであるボクも、
何度も「マジか?」と驚かされてきたので、
そうした評価に反論しようとさえ思わない(笑)
彼のファンとなったのは1989年のアルバム「SPIKE」から。
それ以前にも名前はもちろん知っていたし曲にも触れてはいたので、
今作でのP・マッカートニーとの共演は、
聴き込む上で一つのきっかけとなったのかもしれない。
で、ボクはコステロの声に惚れた。
歌唱力ってどんなチカラなのかよく分からんが、
彼の声には惹き込まれた。
先日BUMP OF CHICKENの新曲に触れて書いたが、
コステロの声にも2つの温度が混在しているように感じる。
彼のライブには3回行った。
最初がソロ、次がアトラクションズ再結成、
最後がピアノとのコンビと、すべて編成が違った。
どれもカッコ良かったが、
最も素晴らしかったのはピアノとのコンビだった。
会場は確かNHKホール。
ある曲を歌っている最中にコステロがマイクスタンドから離れ、
舞台のきわに立って歌った。
もちろん集音マイクはあったのだろうが、
その声のふくよかさたるや圧巻で。
それまでずっと席に座ってじっくり聴いていたファンたちが、
曲が終わるやいなやスタンディングオベーションをし、
その拍手はコステロが何度もお辞儀をしても鳴り止まず。
それはまるで格式あるオーケストラのコンサートのようで。
ボクがそれまで体験したどのライブでも目にしたことのない、
静かで美しい熱狂だった。
気を良くしたのかどうかは不明だが、
そのステージでコステロは7回のアンコールに応えた。
ギターとピアノと歌だけ。
それでも、あれほどの「静かなる熱狂」を巻き起こす。
コステロの歌声にはそういうチカラが宿っている。