「おおむね予定通りじゃん」
3軒目となるバーで、
おいしいカクテルをちびちびと飲みながら、
TORさんがつまらなそうに言う。
細かい修正はあったものの、
初日の主たる目的はしっかりとクリア。
毎度のことだが、
ちょっとしたアクシデントやトラブルが無いと、
TORさんは「退屈だぁ」を連発する。
「え? ご無事で何よりです、よね?」
話を訊いていた女性バーテンダーが、
カウンターの向こうで不思議そうな顔をする。
「気にしないで下さい。
このオヂサン、いつもこうやって、
女性バーテンダーの気を引こうとするんです」
「おぅ。言うじゃねぇか!
確かにカクテルがうまいから、
ちょっとお話したいなと思ったけども」
そこからはいつもの流れで。
なぜオヤヂ2人でドライブなのか?
どんな関係なのか?などを話す。
そして、ボクらは腕の良い女性バーテンダーを、
勝手に「ユミヨシさん」と呼ぶ。
「え? ユミヨシですか?
私の名字と一文字もカブってませんけど」
「ごめんね。気にしないで。
こいつ、いつもこうやって、
女性バーテンダーを口説こうとするんだ」
TORさんはフローズン・ダイキリで、
ボクはシェイクしたマティーニで〆た。
あぁ、楽しかった。