「なんにしてもお互い無事で良かった」
KYSは電話でそう言うと、しばらく黙った。
そして、「実はさ」と切り出した。
自宅に着いてバイクをガレージに入れようとすると、
エンジン付近から煙が出ており。
何かと思いしばらく放置し、
煙が出なくなったのを確認してからガレージへ。
で、昨夕、馴染みのバイク屋さんへ持ち込むと、
どうやらシリンダーが割れてオイルが漏れ、
それがエンジンにたれて白煙が出たのだろうと。
「燃えたりせず自宅まで走ってくれて、
ホントに救われたよ」
「そりゃ、ま、そうだけど。バイクどうするの?」
「お金と時間を掛ければ修理はできるけど、
8月の北海道ツーリングに間に合わないのはイヤだし。
今は買い直しの方が有力かなぁ」
「そっか・・・」
「次も同じバルカンにして、
今のパーツを移植しようと思ってる」
「・・・・・・」
「いやいや、しんみりすんなって。
バイクを降りるわけじゃないんだから」
「そりゃそうだけどさ」
「さんざんオレのムチャに付き合って、
今回もちゃんと走りきってくれたんだから、
ホメてやってくれ」
バルカンはKYSが初めて買った大型バイクだ。
その当時の喜びようたるや大変なもので。
コロナ禍もあってKYSは通年で日本中を走り、
夏の北海道へのツーリング話しが浮上し、
その流れでボクのバイク復帰も決まった。
さらに、今回のツーリングでのトラブルなので、
友だちのバイクとはいえ、
かなり複雑な気持ちになる。
「また相談に乗ってくれ」
KYSはそう言って電話を切った。