
「突然でごめんね」
16時過ぎに電話をもらい、
急いで仕事を片付けて居酒屋へ。
以前より精悍な身体つきになったMYSTさんは、
少し遅れてやって来た。
そして、熱いおしぼりで陽焼けした顔をゴシゴシ拭き、
おいしそうにビールを飲んだ。
「あぁ、うめぇぇぇぇ!」
MYSTさんが登った山は、
道内でも屈指の標高を誇る。
しかも、今日は暑かったので、
ビールのうまさは格別なのだろう。
「去年の夏が最後だから、
なんだかんだで1年ぶりかぁ。
しかも、誰かさんはあの時1次会で帰ったしね」
昨夏、道内同業者の勉強会で、
MYSTさんの定年退職祝いをした。
メーカー販社の代売店担当として長らく活躍され、
ボクらの勉強会発足時の事務局担当でもあり。
約35年前には弊社の担当営業でもありと、
公私ともにお世話になった大先輩だ。
なのに退職祝いを1次会でバックレたと、
ニヤニヤ笑いながら横目で睨む。
「せっかくみんなで祝ってるのに、
あの場にいたらオレがずっと話しちゃうし、
ヘンに湿っぽくなってもいけないし。
それに、近いうちにまた会うから、と」
「そういうところは昔から変わらないね」
仕事における関係がメインでありながら、
時としてMYSTさんとボクは、
その枠を超えて価値観をぶつけ合った。
「そんな時代もあったよね」
MYSTさんは丸めたおしぼりを握って、
かの名曲のフレーズを口ずさむ。
「あなたこそ、そういうところ、
昔から変わらないですよね」
ボクらの楽しい夜は、
ゆっくりと更けていった。