
「ずいぶん早く帰って来たんだな」
ガレージでバイクとクルマを眺めながら、
TORさんは待ってくれていた。
「寄りたい所も無い上に、こんな天気なので。
地元でゆっくりしたほうが良いかなって」
「わざわざ立ち寄らせちゃって悪かったね」
「こちらこそ。
朝早くからオーナーよりくつろいじゃってすみません」
SRのキックスタートを体得したという師匠が、
バイクに跨り手本を見せてくれるという。
1度目、不発。
2度目、始動後すぐにストール。
3度目、不発。だが、掛かりそうな気配。
4度目、見事に始動。
「昨日は1発で掛かったんだけど。
でも、まぁまぁだろ?」
「スゴいじゃないですか」
「やってみるかい?」
師匠が挑発しているのは明らか。
ここで退くわけにいくまい。
SRに跨りキックする。
だが、10度目までまったく掛かる気配がない。
「足だけで蹴ってるからだよ。
ペダルに全体重を乗せて、
身体ごと落とすイメージで」
アドバイス通りやってみる。
1度目、不発。だが、掛かりそうな気配。
2度目、見事に始動。
「おぉ。うまいじゃん」
じゃあ次はサイドスタンドで、などと、
SRのキックスタート合戦が始まり(笑)
「こんな扱いしてたら、
あっという間に不調になりますよ」
「だったらお前が乗ればいい」
「いやいや。TORさんのバイクでしょ?」
「何をいまさら。
ユーノス・ロードスターだって、
年間走行距離の9割はお前が運転してたろーが」
そんなやり取りを経て自宅へ戻った。
まだ本調子ではなさそうだが、
元気になった師匠の姿が見られて良かった。