
隣町でのあいさつ回りを終えたのが昼過ぎ。
ダメもとで先輩のOKMTさんに電話をすると、
14時以降は予定がないのでコーヒーでもと言って下さったので、
近くのカフェで待ち合わせ。
少し早めに店内に入るとOKMTさんがすでにおり、
「ヒマで困ってるんだ」と笑った。
町や仕事のことをはじめ、
映画やスポーツなどについて話したが、
その中でも特にOKMTさんが興味を示したのが、
小説『三体』についてだった。
「SFものって好きだったっけ?」
「小説のジャンルとしてはほぼ読まないんですけど、
中国人作家の作品を読んだことが無かったし、
ネトフリのドラマもかなり高評価らしいので」
「で、どうよ?」
「さすが売れるだけのことはありますね。
おもしろいです。
冒頭かしばらくは文化大革命の時代について書かれてて、
『この作家は大丈夫なのだろうか?』と、
物語とはぜんぜん関係ないことが心配になりましたけど」
「政府に対して批判的な内容ってことか?」
「政治批判がメインではないんですけど、
その当時の過激な反西洋文化、反資本主義の空気感と、
弾圧、粛清の描写はエグいです」
「へぇ。それだけでそそられるな。
ストーリーの核となる部分って難解なの?
最先端科学とか量子力学とかなんでしょ?」
話をしていると、
OKMTさんはこの作品にけっこう興味を持っており、
読む気満々なことが伝わってきた。
「まださほど読み進めてませんけど、
ややこしい理論とか公式の呼称とか単語とかは、
そこそこ出てきますね」
「そうだよな。SFだもんな」
「でも物語の持つ力とか核心が損なわれる感じはしませんね。
逆に、中途半端に理系的知識を持った人だと、
細かいことが気になって楽しめないかもしれません。
ボクが読み終わってからで良ければ、お貸ししますよ」
「おっ、マジか。楽しみ」
そんな話しばかりして別れてから、
年末のごあいさつをしなかったことを思い出した。
それが、あまりにもボクたちらしくて、
クルマを走らせながら1人で笑った。