
「お、うまい」
蕎麦を一口すすってTORさんが言う。
「誕生日のお祝いに蕎麦って、
どうかなぁと思ったんですけど」
「うまい蕎麦ならいつでもうれしいよ。
それよりこの店、
もっと早く教えてくれりゃ良かったのに」

神奈川での仕事の帰りに立ち寄っていた蕎麦屋は、
明日で閉業してしまう。
なので、誕生日のTORさんをお誘いした。
古民家を改装した店舗でJAZZが流れていると、
TORさんはそこそこ蕎麦がうまくても嫌う。
この店は古民家ではないし、
JAZZも流れていないが、
そこここにフィギュアが飾られ、
古いアメリカのポップスが流されている。
「だから、ちょっとためらいました」
「確かに、店の感じはね(笑)
でも、この蕎麦なら文句は言わん。
ヒレカツもやたらうまいし」
そんな話をしていたら、
店主と女将さんが声を掛けてくれた。
「年明け早々にお越し下さって、
ありがとうございます。
今年もよろしくお願いしますって言えないのが、
ちょっと残念ですけど」
「蕎麦、おいしいです。
こいつがもっと早く連れて来てくれていれば、
俺も通ったんですけどね」
「そう言っていただけるだけでうれしいです」
もう一度食べられて良かった。
会計の時、改めてお礼を伝えて店を出た。
ごちそうさまでした。
ありがとうございました。