
「困っても弱っても無いんだけどさ」
珍しい時間帯に、珍しいヤツから着信。
ANDは「久しぶり」とか「元気?」とか抜きに、
いきなりそう切り出した。
なので、ボクもあいさつはせずに言った。
「オレは今この瞬間も困ってるし弱ってるぞ」
「あはははは。よく言うわ」
ANDは専門学校時代の友人。
入学当初からそこそこつるんではいたが、
2年の卒業制作を経て付き合いが深まり、
ボクが35歳で北海道へ移住するまでは、
折を見て一緒に飲むことがあった。
「仕事もなんだかんだでうまく行ってるし、
仲良くしてる友だちもいるしさ。
でも、今日はけっこう酔っちゃって」
最後に会ったのは2年前の3月。
一緒に卒業制作に取り組んだ仲間の、
TKGC、YST、TKYM、ANDの5人で飲んだ。
「またあのメンバーで飲めないかなって」
「うん。いいね」
「あ、でもオレ、困っても弱っても無いよ」
「それ、なんかのフラグみたいだからやめれ」
ANDは専門学校卒業後に紆余曲折あって、
奥さまの実家の商売を引き継いだ。
規模や業種や時代背景による違いはあれど、
会社経営にはさまざまな苦悩がつきまとう。
ANDとボクはたまたま妻の実家の家業である、
小規模事業所の経営を担っており、
抱えているであろうモヤモヤは、
互いに想像できてしまう。
「秋になる前に飲めるかな?」
「みんなに聞いてみるよ。
ま、いざとなれば2人で飲もう」
「えぇぇぇ。2人は重いなぁ」
「電話かけて来といてずいぶんな言い草ぢゃねぇか。
じゃあ担任だったNGNさん呼ぶか?」
「あ、無理無理。
オレ間違いなく暴れちゃう」
そんなオチのない話をした。
思い出話に耽るにはあまりにも短く。
かといって、現状を語るには電話ではもどかしく。
そういう感じの時間だった。