
まるで友だちを遊びに誘う子どものようだった。
「中谷くーん! あと1勝!
12月、お互いがんばって来年、
東京ドームで会いましょう!」
アフマダリエフに完封判定勝利を収めたリング上で、
我らがモンスター井上尚弥は、
満面の笑みで中谷潤人に呼びかけた。
会場を後にしようとしていた中谷は、
その呼びかけに振り返り両手を高く挙げて応えた。
そのシーンを観て鳥肌が立ち、
ちょっと泣きそうになった。
2人の対戦が現実味を帯びたのは、
3月の年間優秀選手表彰式だった。
井上が受賞スピーチで対戦を要求し、中谷も歓迎。
その反響は大きく、
実現を歓迎する声だけでなく、
批判も少なからずあった。
あの時点では2人は階級が異なり、
さらに他の試合が予定されているのだから、
その対戦相手に失礼ではないか、と。
それは井上も中谷も重々承知しているだろうと、
これまでの2人の言動や振る舞いを見ていて思う。
だが、それであっても、
抑えきれない想いがあったのだろう、と。
「強者は強者を知る」
その言葉がピッタリの2人が、
リングで対決する日が近づいて来た。
その瞬間を想像してワクワクしながら、
結果が出てしまうのが怖いとビビる、
小心者で弱者のアラ還オヤヂなのです。