声に温度と情景が宿る人がいる。
そう感じた初めての人だったかもしれない。
俳優の常田富士男さんが亡くなった。
市原悦子さんとコンビを組み、
登場人物すべての声を長年演じた「まんが日本昔ばなし」は、
子どもの頃に親から観ることを勧められた数少ないアニメだった。
その一方で、「そんなの観るんじゃない」と怒られたのが、
児童向けの教育的要素を持ちながらも、
あまりにシュールな演出で賛否が別れた「カリキュラマシーン」。
ここでも常田さんは曲者感を大いに発揮されていた。
出演された作品は映画やドラマやアニメを始め数知れず。
でも、ボクにとっての常田さんはずっと声の人で。
「むか~し、むかしの、ことじゃったぁ」と聞けば、
一気にその時代にタイムスリップし、
「それはとぉ〜っても寒い夜じゃった」と聞けば、
凍える暗闇に1人佇んだ。
そういう声の持ち主だった。
心からご冥福をお祈りします。