早めに立ち寄ったつもりだったが、もう混んでいた。
店主と女将が切り盛りする蕎麦屋は、カウンターの8席のみ。
「ウチ、居酒屋なんで」
蕎麦だけを注文する客にはそっと酒の品書きを差し出す。
そういう雰囲気が好きで通い始めて8年ほど。
「久しぶりですね」
いかつい見た目の店主は多趣味で、人懐っこく。
客ごとの好みや趣味をしっかり憶えていた、
ボクにはいつも音楽や映画の話題をふってくれる。
「実は近いうちに手術することになるから、
その前にと思ってさ」
「えぇ、何? ヤバいやつ?」
「ううん。タチの悪いタンコブ程度」
「タンコブ・・・。
タンコブでも手術が必要なの?」
女将と顔を見合わせて不思議がる。
「ま、大したこと無いのさ」
くだらない会話に絡めて肴をつまみながら、
途中でかけをすすり、〆にせいろを頂いた。
これで思い残すことはない(笑)
ホテルに戻って風呂に入って、寝るべし!