「何だよ、飲めるじゃん」
飲み始めて約1時間。
TORさんがボクの様子を伺いながら言った。
「いや、もう酔ってます」
「そうか? いつもと同じだと思うけど」
「いや。確かにもう顔が赤くなってますね」
バーの店主が助け舟を出してくれた。
と思いきや、「じゃあ代わりにボクが」と、
グラスを差し出して笑う。
「お2人で来てくれるの、久しぶりですね」
「コイツ、アタマが変になったから来れなくて」
「おい、待てヂヂイ。人聞きの悪いこと言うな」
戯言を交えながらゆっくりと飲む。
「ま、とにかく無事で良かったよ」
TORさんが、それとなく、それらしいことを言う。
「オレより10歳も若いヤツが先に死んだら笑えんからなぁ」
「いや。TORさんより早く死ぬよ。
オレより早く死んだら絶交だから」
そういうやり取りをニヤニヤしながら店主が言う。
「縁起が悪いんで、
死ぬとかって話題はやめてもらって良いですか?」
徐々に混み始めてきた店内に、
ボクらの笑い声が久しぶりに響いた。