Spiral-World

めくるめく世界での個人的な日記

あの日の風景

空港から移動するバスが目的地に近づくにつれて、

次第に民家や建物が少なくなり、

海が見える頃には道路と建物の基礎以外はほぼ無くなった。

閖上の小高い丘に登ると、その様がハッキリと見えた。

まるでこれから建売を始める新興住宅地のように、

人の手が入りながらも荒涼としたエリアがそこにはあった。

海岸から約700m。

山と呼ぶにはあまりにも低い日和山をあの日、強烈な地震が襲った。

そして、その後押し寄せた津波はこの山と同じ8.4mに達したという。

ボクが日和山を訪ねたのは2013年の11月。

手を合わせ目を閉じると、

穏やかな午後の風に潮が香った。

あの日、地震が起こる寸前まで、

ここには約5,600人が暮らしていた。

そう聞かされても、信じられなかった。

圧倒的な自然の猛威。

それに対してあまりに無力な人間。

そう言ってしまえば、それまでだが。

「でもね、ボクらはもう前を向くしか無いんです」

案内をして下さった現地ボランティアの男性は言った。

その言葉にただうなずくしか無かった。

来年は東日本大震災から10年となる。

もう一度、日和山を訪ねようと思う。