「酔うといつも、脈略のない話題をブッ込んで来ますよね」
町田の素敵なバーのソファで、
退屈で眠そうなKZKが唇の左側を上げる。
互いに消耗しきった夜の20時から飲み始め、
今や明日がすぐそこ、の頃。
「だからさ、前もって伝えた今夜の議題に還ろう。
『生理的嫌悪感を覚える瞬間』じゃん」
マジメでありたいKZKは、理論的ではない会話を嫌う。
なので、あえて。
「オレが思う理論とKZKが思う理論は違う。
その前提をホントに受け入れられたなら?」
「さっきボクに言いましたよね。
『ホントに』と言って話し始めるヤツほど、
ホントのことを言わないって」
「そうだよ。
だから、オレたちは常にどこかでウソをついてる。
KZKは『誰かに対して』ではなく、
KZK自身に対して生理的嫌悪感を覚えていないか?」
「で?」
「いや。オレがオレ自身を世界で一番嫌っているので。
もしかしてKZKもそうかなって」
「あのぉ、ボクを巻き込むのやめてもらっていいですか(笑)」
そうしてボクの不毛でご褒美な夜が過ぎていった。
いつもありがとう。