Spiral-World

めくるめく世界での個人的な日記

あの子と

北海道へ向かう飛行機の中で、

人懐っこい男の子と出会った。

いつも以上に混み合った機内で、

隣り合わせた男性は家族連れのお父さんのようで。

前の席には赤ちゃんを抱っこした奥さまと、

その隣にはまだ就学前の男の子。

そして、通路を挟んだ隣に小学校低学年のお姉ちゃんがおり、

それぞれのフォローでてんやわんや。

離陸してしばらくすると、

一人で座っていたお姉ちゃんがグズりだした。

なだめようとお父さんが移動し空いた席に、

就学前の男の子が座った。

お母さんが赤ちゃんに付きっきりで寂しいのかと思いきや、

足を前後にバタつかせたり、

シートポケットの機内誌をいじったりして楽しんでいる。

それを見て笑うボクに気づくと、話しかけてきた。

「おじさん、何してるの?」

それを聞いたお母さんとお父さんがすぐに反応。

「こっちに戻って」

「ジッとしてなさい」

その声を遮るように答えた。

「窓から雲を見てたんだ。見てみる?」

と、その子の顔が輝いた。

「うん」

「でもね、飛行機が揺れたらシートベルトするんだよ」

「うん。分かった」

恐縮するご両親に手で合図をし、男の子と席を替わる。

「ね、あれ何?」

雲間からたまに見える建物などを指さして訊く。

その度に機内誌の地図やグーグルマップで説明。

それと見比べて驚く表情が、なかなか楽しい。

そうだよな。

クルマやバスや電車や飛行機に乗れば、

子どもじゃなくたって窓から外を眺めたくなる。

イヤフォンを袋から出して音楽を聴き、

CAからもらったジュースを飲みながらたまに窓の外を覗く。

身体のサイズと歳は違えど、

飛行機に乗ってしまえば人がすることに大差は無い。

興味のあることはひと通り試して満足したのか、

ウトウトし始めた。

CAから毛布を借りて掛けると、しばらくして眠った。

「すみません。移動しますので」

頭を下げるご両親に声を掛ける。

「大丈夫。おかげで楽しかったです」

ボクにもたれ掛かって寝る男の子の顔をしばらく眺めた。

なんともうれしいご褒美をもらった。