KYSは珍しく饒舌だった。
そういう自分に気づくと照れくさそうに笑い、
また喋った。
「誰にも話してないけど」で始まる告白のほとんどは、
「なんとなく気づいてた」ことばかりで。
「おい、ちょっと待て。それってマジか?」
「うん。たぶん、HDTKもATSもHDOも気づいてるはず」
「・・・。マジか、それ?」
「うん」
「なのに、みんな黙ってんの?」
「うん」
「くわー。マジかぁぁぁ?」
「立場が逆だったら、
お前はなおさら知らないふりすんだろ?」
「・・・」
「そんなもんだろ、オレらは」
奥さんを亡くすまでの数年で、
ヤツにいろんなことがあったのは知っている。
で、さらに、あえて口にしない悩みを抱えていることも、
うすうす知っていた。
「それってどうやって気づくの?」
「うーん。話題のかわし方の雰囲気とかかなぁ」
「マジか? 親みてぇでウザいんだけど」
「だから、立場が逆だったらどうだ?
お前こそ抜群の嗅覚であっという間に察知するだろ?
で、知らんふりするだろ?」
「あ”あ”あ”ぁっ、めんどくせぇ。
昔っから思ってたけど、オメーら全員うざってぇ」
「そのままお返しまーす」
バカ話は日をまたいでも続いた。
少しでも気が晴れたなら良いけど。