Spiral-World

めくるめく世界での個人的な日記

2人を繋ぎ、分かつもの

井岡一翔田中恒成の試合を観た。

WBO世界Sフライ級タイトルマッチで、

日本人初の4階級制覇を達成している王者の井岡が、

世界4階級制覇を目指す田中と激突。

以前も書いたが、堅実でテクニカルで試合巧者の井岡と、

若さと闘志とスピードとパワーの田中の闘いは、

大方の予想通りその構図で展開された。

序盤、田中はスピードとパワーを活かし、

思い切り良く王者に迫る。

その勢いにいくぶん押されながらも、

井岡はけして焦ること無く距離と位置を測り、

要所でパンチを当てペースを渡さない。

あえて優劣を付けるなら1〜3Rは僅差で田中かな。

特に3Rで田中がクリーンヒットさせた右ストレートは、

それだけで井岡の左目下を腫らすほどの破壊力で、

TVを観ながら思わず声を上げた。

だが、直後の4R。

スピードとパワーで劣る井岡があえて距離を詰め、

デンジャラスな打ち合いに出る。

それに呼応して田中も打ち合う。

が、スピードとパワーはあれど井岡の防御を崩すには至らず。

むしろ、井岡に距離と位置と流れを支配されつつあり、

その上にコンパクトで鋭いカウンターを繰り出され、

田中に迷いが出たように思えた。

途中、田中がノーガードで顔を突き出したのは、

挑発ではなく自身へのイラ立ちと脱力のためではないか?

だが、それはまったく好転することはなく、

速く強い連打を繰り出すも、

井岡に「もっと来いよ」と笑顔でいなされ、

5R終盤以降はご存知の通り。

田中はスピードとパワーでは上回るも、

井岡がそれを活かし切ることをほぼ許さず。

若く才能にあふれる挑戦者をジワジワと追い詰め、

コンパクトで鋭い左フックのカウンター3発で仕留めた。

「格の違いを見せる」

井岡は試合前からずっと、

そして、試合後にも同じことを話していた。

田中は素晴らしい才能を持ったボクサーだと思う。

スピードもパワーも技術も一流なのだろう。

だが、それだけでは勝てない相手が、世界にはいる。

井岡が口にしていた「格」とは、そう言うことなのかな。

試合を観てそう思った。