3年前の春。
ひょんなことで知り合った刑事さんが、
3月末で転勤になったと挨拶に来て下さった。
「年度末のお忙しいところスミマセン。
ついつい立ち寄っちゃいました」
生まれ育った環境なのか、
民間企業での勤務経験をお持ちだからかは不明だが、
物腰が柔らかく如才ない。
「転職組」としてのご苦労があったと思われるが、
接する相手に警戒心を持たせない人柄は、
これからもずっとご自身を支えるのだと思う。
「それって、最高の褒め言葉です」
偉そうな事を言うオヤヂに、うれしそうに頭を下げる。
「4月からは15年ぶりの交番勤務です」
「あ、そうなんですか?」
「4つの交番のとりまとめ役なんです。
新人教育を兼ねて」
「若手の育成、向いてそうですよね。
イケメンだから制服姿も似合うでしょうし」
「装備が重くて最初は息切れすると思います」
笑ってお茶を飲み干すと席を立った。
「交番ならずっと気軽に立ち寄れますね」
「ぜひぜひ遊びに来てください」
いつものように女性事務員にまで深々と頭を下げ、
帰っていった。