マッケンローについて書くのはとても怖い。
彼は憧れを超えた神の領域のお人であり、
その才能やプレースタイルについて書こうとすると、
ひどく平坦で陳腐なものになってしまう。
だから、これまでもほとんど触れてこなかったと思う。
ご存知のようにマッケンローを象徴するのはネットプレーだ。
スルスルッとネットに出たかと思うと、
相手の強いショットを信じられないような角度に返す。
多くの人がそう思っているだろうし、それに異論はない。
ネットプレーがあまりにすごくて忘れがちなのが、
そこに至るまでの組み立てのウマさだ。
テニス史に残る名プレーヤーなのだから、そんなのは当たり前。
そう言われてしまえばそれまでだが(笑)、
ネットに出るまでの、
そして、そのスタイルで試合に勝つための段取りというか、
仕掛けがすごいよなと今でも思うのだ。
例えばサービスリターン。
マッケンローはサーブが速い相手に対しても、
リターンの位置をあまり変えななかったように思う。
もちろんそれがエースに繋がることもあるのだが、
なんとかラケットに当ててボールが相手コートに届くと、
それがけっこういやらしい位置に行くことが多い。
どんな体勢でレシーブさせられようと、
少しでも相手が打ちづらいところへ。
それを実現する反射神経と技術がスゴい。
更には、ネットに付けないようにと、
相手が深い位置でのストローク合戦を挑めば、
その土俵で勝負して打ち勝つことも少なくなかった。
つまりネットに出ようがベースラインにいようが、
球を捉えるウマさは天下一品。
その型にはまらないプレースタイルと、
気に入らない判定にはとことん抗議する姿から『悪童』と呼ばれ、
良くも悪くも観る人を引き付けた。
この動画は5年前。
マッケンローが54歳の時のもの。
チャリティのエキシビション・マッチだからの演出もあろうが、
それでもこの動きとラケットさばきはスゴい。
やっぱ神だわ。