ホントに強いのか?
そんな疑念さえ生じる圧勝だった。
10年間負け無しの現役王者との前戦は112秒。
今回の元WBAスーパー王者とは70秒。
2戦で2R。
しかも、わずか182秒(3分2秒)で2人をKO。
この数字だけを見るなら、
「噛ませ犬相手のヤラせ」と疑われるのは必然。
つーか、試合を観てても、
その強さがよく分かんないくらい強い(笑)
だって、この試合で井上が当てに行ったパンチは、
おそらく3発。
最初は懐に入り込もうとしたパヤノへの右アッパー。
その後、少し間をおいてワン・ツー。それで終わり。
って、おい!(笑)
強烈な右はもちろんだが、
同様にKOが取れる左フックも井上の大きな武器。
それを警戒するパヤノに対して、
執拗に彼の右ジャブを外側から叩き警戒させていた。
また、細かいダッキングによって、
これまたデンジャラスなボディも匂わせていた。
そこにコンパクトでシャープな左ジャブを、
相手の右の内側から当て、
それに対してパヤノが左を出そうとした(?)刹那、
ノーモーションの右ストレートをドンピシャで合わせた。
ほぼパンチを打たなかった井上が、
突如トップスピードで繰り出したワン・ツー。
それをパヤノがまともに受けたのは、ある意味当然。
ただし、それがKOに直結するのが井上の「怪物」たる所以。
ダウンの仕方を見て高く突き上げた井上の右拳は、
KOの手応えを強く感じ取った証しだったと思う。
細かく言えば世界戦ならではのハイレベルな駆け引きと、
ボクシングの怖さがこれでもかと凝縮されていたが、
それでも70秒での決着はやはり早すぎる。
噛ませ犬相手のヤラせであるならなお、
もう少し時間を掛けるし、
映画やドラマのように念入りにリハーサルをしたとしても、
あそこまでキレイなダウンシーンは作れまい。
強すぎて強さが分かんない。
井上尚弥というボクサーは、
すでにそういう領域に立っているし、
そういうチャンピオンの試合が観られることが、
心からうれしい。