珍しくケータイが鳴った。
相手は弊社営業のADC。
そもそもボクのケータイはほとんど鳴らない。
しかも、堅実に仕事をこなすADCから、この時間に・・・。
トラブル、確定でしょ。
「夜分にスミマセン」
想定通りの沈んだ声。
「ぜんぜん大丈夫。どーした?」
努めて平常に答える。
「実は・・・」
彼が担当するお客さまの印刷物にミスが有り。
即座に対応したのだが、一部は回収できず。
「了解。で、お客さまは?」
「すでにお詫びして了解して頂きました」
さすが。
それなら、大丈夫。
「分かったよ。そっちに戻ったらお詫びに行くから」
「はい。で・・・」
まだ、何か?
「別件なんですが、来季の書籍販売の移管について」
あぁ、それ? ヤバそう?
「ちょっと雲行きが怪しくて」
それはマズい。
ボクが選定しADCが交渉を進めていたが、
期限が迫っているのにどこも腰が引けているという。
「様子が分からないのがネックみたいで」
うーむ。
今月末には卸先に回答する予定だったのに。
困ったなぁ。
「こちらに戻られたら、一緒に動いてもらえますか?」
「もちろん。卸先には『あとひと押し』って伝えて」
印刷物のミスも、もちろん良くない。
でも、もう一つの問題はさらによろしくない。
根回し過ぎるとかえってマイナスかと、
あえて動かなかった。
マズかったかなぁ。
あ”あ”あ”ぁっ! 困ったぁ!!