「おかえり」
お宅へ立ち寄ると、
ライカのポラロイドを片手にTORさんが立っていた。
「なんだよ。やたらキレーじゃん。
良いな、この色。かっこいいわ」
そう言いながら何度もシャッターを切る。
「で、どうだった?」
「一連の操作は思った以上に当たり前にやれましたね。
コーナーはまだ不安ですけど」
「上出来じゃん」
「ま、どうなんでしょうか?」
「あんなにビビってたのを思えば上出来だよ」
「あはははは。そりゃビビりますって」
「その割に無茶なツーリング計画して。
相変わらず意味分かんないヤツだな」
「師匠に似たんですよ」
冗談話がいつにも増して華やぐのは、
TORさんもバイク乗りだからだ。
「この後、行くんだろ?豆屋さんへ。
あと少し。気をつけてな」
手を降ってシールドを下げると、
ヘルメットの中でコーヒーの匂いがした。