義母は意識は回復したものの、
マスクを付けて強制的に酸素を送り込まれ、
ボクの言葉にうなずくのがやっと。
「無理にしゃべらずに。
何かあったら手をあげて教えてね」
小さくうなずく。
酸素は少しずつ取り込めるようになっているが、
二酸化炭素をうまく排出できていないとか。
本来は挿管すべき重篤な状態であり、
マスクによる酸素吸入は負担も大きいというが、
本人がすべての積極的延命治療の拒否を表明しており、
ボクらもそれを支持した。
若い担当医にはイラ立ちを隠さなかった。
命を救うことを使命とする方々にとっては、
この上なく歯がゆいのだろう。
だが、同じことを望む者として、
義母の意志を曲げることはできない。
時折、声を掛け、手を握り、足を擦る。
それ以外には、待つしかできない。
本を読む。
「羊をめぐる冒険」。