Spiral-World

めくるめく世界での個人的な日記

本を読む #1

義母は意識は回復したものの、

マスクを付けて強制的に酸素を送り込まれ、

ボクの言葉にうなずくのがやっと。

「無理にしゃべらずに。

 何かあったら手をあげて教えてね」

小さくうなずく。

酸素は少しずつ取り込めるようになっているが、

二酸化炭素をうまく排出できていないとか。

本来は挿管すべき重篤な状態であり、

マスクによる酸素吸入は負担も大きいというが、

本人がすべての積極的延命治療の拒否を表明しており、

ボクらもそれを支持した。

若い担当医にはイラ立ちを隠さなかった。

命を救うことを使命とする方々にとっては、

この上なく歯がゆいのだろう。

だが、同じことを望む者として、

義母の意志を曲げることはできない。

時折、声を掛け、手を握り、足を擦る。

それ以外には、待つしかできない。

本を読む。

羊をめぐる冒険」。