数ある手配書の中でも、その顔を鮮明に覚えていた。
写真の中で笑う表情が、
ボクの中にある犯罪者のイメージと、
まったく違っていたからだろう。
桐島聡と名乗る男が1月29日、
入院していた神奈川県内の病院で死亡したと報じられた。
1970年代に起こした連続企業爆破事件の容疑者として、
全国に指名手配されていた。
当時、加熱していた学生運動から過激派に。
それくらいの認識しかない。
50年近くも国内で潜伏し、
一般人(?)を装って暮らしてたという。
その事実にwebではメディアやYouTuberが、
「日本の警察の敗北」と騒ぎ立てている。
確かにそうだが、
もしボクがどこかで桐島と出くわしたとして、
指名手配中の連続爆破犯だと気づけたかと問われると、
ぜんぜん自信が無い。
でも、八田与一や市橋達也や小暮洋史なら、
たぶん気づけたように思えてしまう。
それは手配写真というか、
パッと見の印象の違いではないか?
誤解を恐れずに言うが、
ボクは見た目で人を判断する。
表情や視線や声や仕草や行動や言動は、
かなりはっきりと人柄を表す。
そう信じているからだ。
などと言いながら、
連続爆破犯の桐島容疑者に気付けないと思うのだから、
ボクには人を見る目が無いということになるし、
実際にそうなのだと思う。
それはともかく、桐島聡は50余年間逃げ通した。
事件を起こし他者を傷つけながら、
法の裁きを受けず、刑務所にも収監されず、
罪を償いもせずに。
死の際に自らの正体を明かしたのは、
警察や法や社会への勝利宣言や承認欲求だったのか?
はたまた、桐島聡として最期を迎えたかったのか?
それは誰にも分からない。