漫画家の芦原妃名子さんが亡くなった。
これまでにいくつもの人気作品を描かれ、
TVや映画で映像化されたものもあるという。
昨年の秋には「セクシー田中さん」がTVドラマ化され、
けっこう視聴率も良かったそうだ。
だが、今年の1月26日にご自身のブログとSNSで、
ドラマが原作から大きく改変され制作陣と意見対立し、
9、10話の脚本を自ら担当した経緯を明かしていた。
そして、28日にその投稿を削除し、
謝罪のコメントを残した後から行方不明となり、
29日に栃木県日光市内で死亡しているのが発見された。
遺書のようなものも発見されており、
現場の状況などから自死とみられている。
小説やマンガなどを原作とした映像作品化には、
こうしたトラブルは付き物だ。
いや、オリジナルドラマの脚本家と、
監督や演出ですらもめていないことが無いと思う。
そうしたトラブルで、
ボクが知る限りで最も有名なのが、
「シャイニング」にまつわるもの。
原作者であるスティーブン・キングは、
キューブリック監督による大幅な内容変更に激怒。
同作と監督への批判を繰り返し、
17年後にはバッシングを自重する事を条件に、
キング自身の脚本によるドラマで再映像化された。
そんな逸話が微笑ましく思えるほど、
今の情報化社会は時として、
無慈悲で残酷で醜悪な姿を見せる。
そこに自覚があろうがなかろうが、
また、善意であろうが悪意であろうが、
第三者の言葉がダイレクトに本人へ届く。
過去にネット上で殺人事件の犯人だと書き込まれ、
長年にわたり誹謗中傷を受けたスマイリーキクチは、
今回の件について自身のSNSに書き込んだ。
「言葉の刃を振り回す通り魔はSNSをやめてほしい」
インターネットは世界を変えた。
望みさえすればリアルタイムで多くの人とつながれ、
さまざまな情報を得られる。
例えるならそれは、
物理的な空間移動を伴わない「どこでもドア」であり、
ドラえもんのポケットと等しい。
その恩恵は計り知れず、
この環境無くしてもう世界は成り立たないだろう。
だが、どれだけネットワークが広がり、
情報化が進もうと、
真実や真意が伝わるとは限らない。
むしろウソは事実より、
100倍の拡散力と20倍の拡散速度を持つとの、
研究結果があるほどだ。
繰り返しになるが、
複数のクリエイターが集まって1つの作品を仕上げる際に、
こうしたトラブルは不可避だと思う。
まったく別の、大きな問題があるように思えてならない。
「攻撃したかったわけじゃなくて。
ごめんなさい。」
彼女の最後の言葉は、あまりにも哀しい。
芦原妃名子さんのご冥福をお祈りすると
せめて今は彼女が安らかである事を、
願わずにはいられない。