Spiral-World

めくるめく世界での個人的な日記

酷暑見舞い

 昼の暑さを放射するような夕焼けを添えて、便りが届く。

 調べると差出人が暮らす街は今日も人間の平熱超え。そりゃぁ暑いだろうさ(笑)

 十歳になる頃までの夏休み。両親の田舎へ帰省すると、よく井戸の水を汲みに行った。

 いっぱいになったバケツを両手で必死に持って、水をこぼしながらヨロヨロと運び、縁側に置かれた大きな桶に入れる。それを何度か繰り返し、桶が満水になると、バァちゃんが大きな氷と一緒に、野菜やスイカやジュースを入れて冷やす。

 その桶に足を入れて冷やしたいのだが、「汚いからダメ」と言われ、しかたなくもう一杯バケツに水を汲んで来て、サンダルを脱いで足を入れる。

 汗で濡れた髪の毛をタオルで拭き、うちわで扇ぐ。冬には肌を切るような冷たい水が、夏の陽に灼かれた身体にはこの上なく心地よい。

 と、バぁちゃんが冷蔵庫からアイスキャンディを出してくれる。手伝いというより、夏を遊んだご褒美。

 吸った汗が絞れそうなTシャツを脱いだ上半身は、すでに乾き始めているが、もう少ししたらきっと夕飯のお使いに行かされ、その汗を流すのに、ほぼ水の風呂に入らさせられる。

 今年は海に行けるのか? 花火は買ってくれているのか? 

 

 もう待つ人も家の跡形すらも無いあの場所が、彼女の便りから克明に甦った。