Spiral-World

めくるめく世界での個人的な日記

敗者なき激闘

ボクシングを見た。

WBO世界フライ級タイトルマッチを観たのだが、

木村翔田中恒成による激しい打ち合いに、

「ボクシング」を見させてもらった。

若き挑戦者は無敗で2階級制覇を成し遂げているエリート。

迎え撃つ王者はデビュー戦でのKO負けから、

「雑草魂」で世界王者まで這い上がり、

現在、世界戦3連続KO勝利中と勢いに乗る

スピードとテクニックで勝る挑戦者。

無類のガッツとタフネスが信条の王者。

その互いの「距離」が勝負の分かれ目と見られていたが、

試合開始のゴング直後から2人は頭をぶつけ合うほどの至近距離で、

一歩も退かぬ打ち合いを展開。

みっともないクリンチやホールドはほぼ皆無。

最終ラウンドの1分過ぎには、

互いにKOを狙った渾身の右ストレートを何度も交差させ、

会場を大いに沸かせた。

息もつかせぬどつき合いはそのまま試合終了まで続き、

判定の結果、114-114、113-115、112-116の0-2で、

木村が王座から陥落。

判定がすごく難しい試合で、

逆の結果になっていてもおかしくは無かった。

でも、試合終了のゴングと共に、

2人が笑顔で互いの健闘を称え合ったことからも、

死力を尽くしたクリーンな闘いであったことが分かった。

新王者の田中は、

世界最速タイとなる12戦目での3階級制覇を達成。

国内ジム所属の3階級王者は7人目だが、

23歳の田中が最年少記録を塗り替えた。

無敗での到達は井上尚弥以来の2人目という快挙。

しかし、その余韻に浸ることはなく観客に呼びかけた。

「みなさん、木村チャンピオンが退場されます。

 最高の拍手を送ってください」

そう送られた木村は、むせび泣きながら控室へ。

「本当に気持ちのいい試合ができた。

 もうやりたいと思わない。燃え尽き症候群。引退する」

今後の進退について一度は断言したが、すぐに翻意。

「またやりたいって思うかも」

悔しさを滲ませて、現役続行に含みを持たせた。

ホントに素晴らしい試合だった。

おつかれさまでした。

ありがとうございます。