「良いんですよぉ。
またしばらく会えないんだから」
ADUは先に降りた駅でJRが発車するまで帰ろうとしない。
見送られるのがキライだし、
寒いから帰ってと言ってるのに。
「今度は東京か横浜ですね」
ようやく発車のアナウンスが流れると、
眠そうにしていた目をシャキッとさせて言った。
駅が小さくなるまで手を振ってから席に座り、
音楽を聴きながら窓の外を眺める。
6年。
ADUたちの仕事の常識から考えれば、
けして短くはない期間だ。
出身地も年齢も違うボクらは北海道で出会い、
大きなイベントに向けて一緒に動いた。
その間に、彼は結婚し子どもも授かった。
「大切な6年間でした」
音楽を聴きながら、
別れ際の彼の言葉が何度もこだましていた。