「時間が掛かってしまい申し訳ありません」
羽田空港の手荷物検査場でのこと。
爪とぎをしげしげと眺める若手女性検査官と、
ボクのやり取りを聞きつけて、
中堅と思しき女性検査官がフォローしてくれた。
トラベルキットは、
前々からチェックを受けることが多かったので、
最近はカバンから出し、
フタを開いた状態でトレーに載せている。
だが、今回はそれをさらにチェックしたいという。
「それ、すごく良く研げるよ。使ってみて」
どれだけ眺めようと、爪とぎは爪とぎ。
旅行用に作られたものなので、
形状も長さも規定内であるはず。
その前提に立って言ったボクの冗談に、
若手女性検査官はちょっとムッとした表情を見せた。
で、すかさず中堅の女性検査官が、
救いの手を差し出してくれたというワケだ。
「いよいよオリンピックですね。
おつかれさまです」
そう言うと、若手女性検査官は頭を下げた。
「ご協力、ありがとうございました」
あなたがしていることはとても大切です。
でも、何かをやらかす人はもっとヤバいモノを、
もっとうまく隠して持ち込むと思うよ。
さ、帰ろう。