「すっかり世話になったな」
「世話なんか1mmもしてないけど」
乗船するクルマもほぼ消えた港に、
ボクたちのバイクのエンジン音が響いていた。
「そろそろ行くわ」
「おう。向こうでも気をつけて」
「お前も帰り道で事故んなよ」
ヘルメットを被り、クラッチを繋ぐ。
KYSは右折してロータリーを回ると、
一度停まって右の拳を突き上げた。
ボクも右手を振って左折。
国道へと向かう長い直線で3回、
大きくアクセルを吹かした。
そうしてボクらの熱く短く濃密な、
「この夏」が終わった。