チャンピオンの寺地拳四朗が敗れた。
イカついリングネームに反して童顔。
だが、リングに立てば、
小気味良いフットワークとジャブで流れを掴む、
クレバーなボクシングを展開。
5度防衛すれば安定王者とされる中、
これまで無敗で8度もタイトルを守ってきた拳四朗。
知人のクルマを破損させるなどの騒動はあったが、
その強さは一定以上の評価を得ていた。
今回は地上波での放映が無かったが、
動画を見る限り拳四朗は初回から動きにキレがなく。
挑戦者より先んじて左を繰り出すも、
どこか虚ろさが感じられた。
一方、矢吹のジャブはスピードもキレもあり、
王者にダメージを与えるとの意志が見て取れた。
なので、手数では劣るものの、
「矢吹、有利」との4Rのオープンスコアを、
ボクは違和感なく受け容れた。
拳四朗は左ジャブは出すものの一本調子。
従来の大胆さが見られないどころか、
左に続くパンチも極端に少なく。
特に右の少なさは故障を疑いたくなるレベルで、
常に挑戦者に押されている印象を受けた。
8回終了時点でのオープンスコアでは、
最大6ポイント差の0-3が場内に告げられる。
倒す以外に勝ちがなくなった王者は9回、
距離を詰めて打ち合いを仕掛け、
矢吹をダウン寸前まで追い詰めるもゴングに阻まれた。
続く10回も序盤は攻勢に出るも中盤に失速。
終盤に気力を振り絞った矢吹の逆襲をかわせず、
最後はレフェリーに抱きかかえられた。
試合後のヤフコメなどには、
「4Rまでの?判定が敗因」的な書き込みが目に付く。
拳四朗の陣営もそれをポイントとして上げているし、
矢吹自身も驚いたとコメント。
だが、ボクが観た動画では1〜4Rは、
あきらかに挑戦者が有利に思え、
むしろ8回終了時点でのポイント差に驚いた。
先日の井岡戦でも触れたが、
明確な決定打がない状況での判定は、
ジャッジが好む「闘い方」に比重が置かれがち。
手数か、ダメージか。華麗さか、愚直さか。
優劣の境は極めて不透明になり、
それ故に驚くほど一方的な点差となる。
9Rでの王者の猛攻は凄まじかった。
10Rでの挑戦者のラッシュよりもスゴかった。
なのに、レフェリーが試合を止めたのは10R。
それまで王者が受けたダメージと、
反撃の姿勢が消えたと見てのことだと思う。
コロナ感染などの不利な状況も含め、
王者とっては厳しい闘いだったと思う。
だが、それらを覆すだけの圧倒的な底力を、
拳四朗が持っていなかったのも事実。
どれだけ強かろうとも、
ほぼすべてのボクサーが負けを経験する。
拳四朗が更に強くなった姿を見せてくれることを、
心から願うばかり。
あ、サムネイルには、
朝日新聞DIGITALが報じた記事の、
筋野健太さんの写真を使わせて頂いた。
両者の闘志が交差する瞬間を見事に捉えた、
素晴らしい写真だ。
矢吹正道選手、
念願の世界タイトル獲得、
おめでとうございます。