「これはあくまでもデートで、
しかも私が口説かれてるって流れで良いんだよね?」
テニス仲間で看護師をしているYUKちゃんを、
地元のカフェに呼び出し、
義兄が用意してくれたバームクーヘンを渡した。
「知っていると思うけど医療従事者って、
心付けは受け取らないから」
「もちろん存じております。
だから、今日はデートでオレが口説いてる。
間違いありません」
義母の退院後の生活を見据えての準備で、
個人的にアドバイスがほしいとお願いしたところ、
出勤前に時間を作ってくれたのだ。
「ここで話してもたぶん覚えていられないと思うから、
後でメールにして送る」
弊社の顧客企業の会長の次女であると同時に後輩の妹であり、
ボクも所属するテニスサークルの親分の妻であり、
いつもお世話になっているYKOさんの義妹。
彼女とのお付き合いはかれこれ20年。
ボクがいい加減なことは百も承知で。
「お義母さんが退院して落ち着いたら、
ちゃんとテニスに来なさいよ」
彼女は渋々バームクーヘンを受け取ると、
コーヒー代をテーブルに置いて、仕事へと向かった。
ありがとう。