前回のつづき。
15年ほど前に、
地元行政主導の移住促進を、
経験者として数年に渡ってお手伝いした。
関東や関西でのフェア会場ではPRや勧誘、説明などをし、
お試し暮らし参加者とのイベントにも顔を出し、
実際に移住した人を雇用したこともある。
そうした経験を通して、
移住に失敗する人たちに共通していると感じたのが、
「自覚」の欠落だ。
そもそも小規模な集落や組織に秘匿性は無いし、
仕事以外で驚くほど多くの役割を受けることになる。
それは好奇や興味本位や非効率的思考である以上に、
そのコミュニティの安全性に直結するからだ。
ボクがバイク事故で入院した時は、
誰にも知らせていないし個室だったのに、
なぜか翌朝の早くから多くの見舞いを頂いた。
個人情報もプライバシーもあったもんじゃない(笑)
近所の人たちの無事と、
火事などが起きないかを確認するために、
深夜にも関わらず自発的に巡回している人がいたし、
食料の確保などを心配して下さる方も多くいた。
良くも悪くも田舎とはそうやって成り立っている。
ボクの北海道移住は、
けして積極的に望んだものではなかった。
それでも20年を超えて定着できたのは、
心優しい仲間に恵まれたからだ。
そして、その仲間の多くは、
別の町での生活を経験している方たちだった。
「孤立はさせず、自立につなげる」
移住促進の会議体ではそれを目標とし、
都市部でのフェアやお試し暮らしなどのイベントでも、
よく口していた。
福井県池田町が1月の広報誌に載せ、
話題となったた「池田暮らしの七か条」には、
「自覚」との言葉が3回使われる。
それを「上から目線」とか「これじゃ衰退する」など、
さまざまな批判が飛び交っているし、
そう感じる人がいてもおかしくないと思う。
だけど、ボクは、この町の対応は、
移住者に対して真摯で親切だと思う。
一時的に移住者が増えたとしても、
定着につながらなければ意味はない。
人口が減り衰退していくことも大きな問題だが、
コミュニティの一員になれない住民を増やしても、
別の意味での大きな問題につながる。
それを行政として表明するのは、
かなり勇気がいると思うのだ。