「お前からユーミンの解説を聞く日が来ようとは、
夢にも思わなかった」
KYSは驚いたふうでもなく、
だけど大袈裟な言い方をした。
「さほど興味がないんだろうと思っていたからさ」
確かに。
日本の音楽シーンを牽引、席巻していた当時も、
大騒ぎするほど好きではなかったし、
KYSにユーミンを語った記憶もない。
ただ、多くの名曲で時代を彩った事実と、
ある時期までの彼女が書く歌詞には、
尊敬と言うより畏怖に近い感覚を持っている。
ボクなら3曲をどうセレクトするか考えた。
どう選ぼうともありきたりになるが、
「リフレインが叫んでる」「雨のステーション」、
そして「埠頭を渡る風」だな。
そんな話をKSYにしたところ、
冒頭の反応が返って来たのだ。
「埠頭を渡る風はさ、
2度目のサビだけ歌詞が変わるんだけど、
それに合わせてコーラスが加わるんだよね。
曲としての展開と歌詞の転換が、
何度聴いてもゾクッとする」
「そうなんだ。
今度聴いてみるけどさ」
KYSは少し間を空けていった。
「お前がユーミンを熱く語るの、
やたらキモいわ」
あはははは。
だよねぇ〜。