Spiral-World

めくるめく世界での個人的な日記

それで良いのか?

夏の甲子園を制したのは大阪桐蔭

史上初となる2度目の春夏連覇で、

第100回の記念大会に華を添えた。

一方、敗れはしたものの、

金足農業の快進撃は今大会の話題の中心だった。

秋田大会から一切交代なしの9人で戦い続け、

甲子園でも強豪校を相手に勝ちを重ねる姿に、

試合を追うごとにファンが増えていったように思う。

その躍進の原動力となった吉田輝星投手の好投は、

大いに注目を集めたし、

早くもドラフト上位指名のウワサが出ている。

秋田勢としては103年ぶりの決勝進出を果たしたが、

結果は13-2での大敗。

大阪桐蔭が攻守でレベルの高さを見せつけた格好だが、

敗者にも大きな拍手が送られたのが印象的だった。

「規模も実績もケタ違いのメジャー校に挑む無名校」

選手たちには失礼を承知で言うが、

そんな図式の戦いに、

高校野球ならではの興奮と感動を覚えたファンは、

けして少なくないと思う。

ただ、心配なのが吉田投手の負担だ。

秋田大会から準決勝までの10試合で、

彼が連続完投に要したのは1,385球。

大阪桐蔭との決勝では5回までに132球を投げ、

秋田大会を含めた11試合で1,517球を投じている。

選手の能力は千差万別だが、

試合を重ねるごとに吉田投手の球威が落ちたのは事実。

それもそのはず。

彼が甲子園の6試合で投げたのは881球。

1回戦、8月8日の鹿児島実戦で157球。

中5日での2回戦、8月14日の大垣日大戦で154球。

中2日の3回戦、8月17日の横浜戦で164球。

中0日の準々決勝、8月18日の近江戦で140球。

中1日の準決勝、8月20日日大三戦で134球。

中0日での決勝の大阪桐蔭で132球。

キャッチボールや投球練習ならまだしも、

真剣勝負でのこの球数は尋常ではなく、

加えて疲労が蓄積する大会の後半戦ほど、

試合間隔が短くなる日程も大きなダメージとなり得る。

そうした登板過多を防ぐため、

国際大会では常識になりつつある投手の投球数制限は、

来月3日からの「U-18アジア選手権」でも採用される。

1試合での最大投球数を105球までと定め、

その他、球数に応じて登板間隔の条件を設ける。

105球超えの場合は中4日。

2連投で計50球以上を投じた場合は、

1日以上のインターバルを取らなければならない。

この動きに日本高野連も反応。

公立高校などに部員が10人程度のチームがある現状を考慮しつつ、

導入を前向きに検討していると示唆した。

その一方で、野球部を預かる指導者たちからは、

様々な意見が出ているようだ

金足農 秋本コーチ

「球数制限には反対です。

 秋田は野球人口だけではなく、

 子供そのものの数も減ってきていて、

 小学校でも連合チームが増えています。

 限られた戦力で勝負しなければならない状況で、

 公立校で継投できる投手を3〜4人も確保するのは、

 現実的に難しい。

 導入されれば、

 今大会のウチのような躍進は極めて難しい。

 お客さんのためにやっているわけではないが、

 ドラマも何も生まれなくなってしまうのではないか」

済美 田坂部長 

「ルールとして何球以内と制限するのは反対です。

 なにより生徒たちは甲子園に行きたい、

 投げたい、プレーしたいと思って入部してくる。

 我々は甲子園に行かせてあげるためにベストを尽くしている。

 そこをまず考えて、投手の起用や采配を振るっている。

 指導者が投手の状態、試合展開など、

 いろんなバランスを測りながら、

 判断していくのがいいと思います」

日大三 三木部長

「制限を設けるのは反対です。

 高校野球は教育の一環。

 今大会で言えば、吉田君の気迫や、

 一人でマウンドを守り抜くエースを、

 仲間が助けようとする姿に、

 多くの人が心を揺さぶられ、

感じるものがあったのではないでしょうか。

 投球制限が設けられれば、

 埋没してしまう才能もあるのでは。

 私は一指導者として、

 そういうタフな選手を育てていきたい」

大阪桐蔭・橋本コーチ

「賛成も反対もありません。

 ただ、導入するのであれば小、中、高校、

 大学、社会人も全部やる。

 高校だけでやっても意味は薄い。

 全部、統一できたらいいと思います」

引用元:東スポweb

過去に甲子園を沸かせたエースでは、

98年優勝の松坂大輔(横浜)が6試合で782球、

06年優勝の斎藤佑樹早実)は7試合で948球、

準優勝の田中将大(苫駒)は6試合で658球を投げている。

「野球だけが、甲子園だけがすべてではない」

確かに。

でも、そう言えるのは、

野球を極めた人か野球を諦めた人たちか、

もしくは、野球を見るだけの人たちだ。

今、この瞬間グランドに立ち、

練習や試合で汗を流している野球少年の多くが、

甲子園とその後に続く道を真剣に目指し、

いつも勝ちたいと願っている。

ありきたりだが、

その想いを受け止めつつ、

少しでも体の負担を抑えるのが、

大人の役目なのだろうと思う。