9歳になる甥っ子を連れてゲレンデへ。
本人は半分乗り気で、半分は不安げ。
その迷いを押し切ってスキー教室へ参加させた。
「滑ろうと思えば滑れるんだけどさ」
教室の集合場所へと向かう途中、
下を向いたまま小さな声で言う。
「足のケガが治ったばっかりだから」
学校で鬼ごっこをしていて左足首を骨折。
それが治ったばかりなのは事実。
「お医者さんはなんて言ってたの?」
昨夜も同じやり取りがあった。
「無理しなきゃ大丈夫だって・・・」
「じゃぁ、無理しないで楽しもう」
「うん・・・」
不安なのはケガではなく、スキーそのもの。
それは知っている。
「上手になって俺に教えてよ。
内緒だけど、俺、ぜんぜん滑れないんだ」
それを聞いて表情が明るくなる。
「ほんと? ほんとに滑れないの?」
「マジでぜんぜん滑れない。
だから、上手になって内緒で教えてくれ」
「うん。いいよ」
うまくならなくても、楽しめば良い。
いってらっしゃい。