「エグいっすね、かなり」
バイク屋さんで車輌の説明を受けながら、
ETCやシートバッグを装着。
と、若い男性店員が笑う。
「ネット販売がメインなので、
いろんなお客さんがいますけど、
北海道まで自分で乗って行く人は初めてッス」
「7年ぶりなので緊張してるけど、
そんくらいできなきゃ、
乗らないほうがマシかなって」
エンジンを掛け、軽くアクセルを捻る。
空冷独特の乾いた重低音。
その響きに呼応して胸が高鳴る。
「さて。のんびり行くか」
KYSがヘルメットのシールドを下ろし、
ゆっくりと走り始める。
ボクも丁寧にクラッチを繋ぎ、後に続く。
大きな通りに出る手前でギアを落とし、
アクセルを吹かしてエンジンブレーキ。
そして、フロントとリアのブレーキを軽く当て、左足をつく。
大丈夫。身体が憶えている。
そうして、新しい旅が走り始めた。