仙台へ行くことがあれば、
ゼッタイに立ち寄りたい店があった。
「そこまで言うなら、行こうぜ」
仙台市内へ入る前の休憩でKYSが言う。
「こんな機会もそうそう無いしよ」
フェリーの受付時間を考えると、
いくらかペースアップが必要となる。
それを気にしているのを見透かされた。
「まさか、オレを心配して無ぇだろうな?
だとしたら余計なお世話だ。
つーか、テメェの心配してろ」
その言葉通り、KYSはペースを作ってくれた。
きっちり。
で、お店の夕方オープン5分前に到着。
「芯たんってなんだ? 食ったこと無いわ」
牛たんの中でも特にやわらかな部位を厚切りにした、
この店の名物。
2013年に被災地の支援で訪ねた時に、
立ち寄って食べた。
「何だこりゃ? めちゃくちゃウメーな」
うまいものを食べながら、行程を振り返る。
ツーリングの醍醐味。
ノンアルコールビールなのは残念だけど(笑)
食べ終えてガソリンスタンドとコンビニに立ち寄り、
フェリー乗り場へ。
KYSの今夜の宿から離れると断ったが見送ると譲らない。
「フェリー乗り場がオレのツーリングの目的地なんだよ。
ごちゃごちゃ言うな」
見送られるのはそもそも苦手。
それも今回は特別で。
「自宅へ戻ったらメッセージ。お互いにな」
フェーリーへ乗り込む直前、
珍しくKYSが右手を差し出した。
「復帰、おめでとう。やたら楽しかったわ」
鼻の奥がツーンとする。
だからイヤだったんだよ、見送られるの。
「ありがとな」
手を降って乗船スペースへバイクを走らせる。
ありがとう。
またね。