「お前は女の子のいる店に行きたがらないくせに、
今回はやたらうるさいから仕方なくね」
ISMさんは照れると言葉遣いが荒くなる。
今夜は特に、だ。
「金輪際この店のドアは、
くぐらないつもりだったんだけどなぁ」
「でも、内心ホッとしたんでしょ」
ボクが返すと何も言わず、にやけた。
ISMさんと札幌で飲むと、
ほぼ毎回立ち寄るスナックがある。
1月、そこに立ち寄った際、
ISMさんがママに絶縁宣言をした。
年末、ISMさんは大切なお客さまと一緒にいて、
閉店後のママと合流する約束をキャンセルした。
その際の受け答えが冷たかったと怒ったのだ。
「自分が悪いと思っているからこそ、ですよね」
ISMさんは女性がいる店によく行き、
そこのママと仲良くなる。
でも、それはプロとして認めたママとだけ。
不思議なほど下心はない。
「いろんなお店に連れていってもらいましたが、
ずっと残っているお店ってここだけですよね。
あのままじゃ寂しいでしょ、さすがのボクも」
気がつけば、深夜。
結局、いつもの2人。
「お2人はほんとに仲が良いですよね」
ママは何事もなかったかのように、
お酒を作ってくれた。