温泉に行くと受付の顔見知りの女性スタッフが笑ってる。
いつにも増してにこやかに。
観光客で混み合っていて、
おもしろいハプニングでもあったのか?
そう思いながら声を掛けた。
「こんちは。今日も混んでますか?」
「今日はそうでもないですよ」
「あぁ、良かった」
と、妙な間ができる。
そして満面の笑み。
「ん? どうしたの?」
「何か忘れてませんか?」
「え? なになに? 忘れるってなにを?」
彼女は受付の奥に一度入って、
背後に何かを持って出て来た。
「これ、忘れたでしょ?」
彼女の手にはボクの温泉セットが入ったバッグ。
「あぁ! え? オレ、忘れていった?」
「やっぱり覚えてなかったんだ」
その温泉はシャンプー類も置かれており、
タオルも貸し出してくれるので、
ほとんどの方は手ぶらで来られる。
なので、バッグを持って更衣室へ入るボクを、
しっかりと覚えてくれていたのだ。
「サウナハットとマットとナイロンタオルは、
ちゃんと洗って干しておきましたよ」
とほほほ。
ほんと、情けなくて、申し訳なくて、
ありがたい。
とても助かったが、
忘れ物したことにすら気づかないって、
ヤバすぎだろ、オレぇぇぇ!