「もう1年も経つのかぁ」
タイガースの藤浪が勝利投手としてインタビューを受ける姿に、
なぜかホッとしている自分を見た。
「なぜか」と書いたのは、別に彼ファンではないから。
にもかかわらず、藤浪晋太郎という投手は、
その勝ち負けが、そして、その理由が気になる投手なのだ。
もしかすると、ボクがファンである大谷翔平と同期であり、
同じ右投げの本格派投手であり、
更にいえば、
2人がプロデビューしてからのある瞬間まで、
投手としては藤浪のほうが高い資質を持っているのではと、
どこかで思っていたからかもしれない。
その認めたくない思いと向き合ったのは、
藤浪がコントロール難で苦しみ始めた頃。
つまり、大谷自身がプロになって新たに投手としての資質を開花させ、
同期の藤浪を凌ぐチカラを示したのではなく、
藤浪が不調に陥ったために改めて感じたことだった。
「ホントの絶好調時、スゴいのはどっちだ?」
答えなど出ない問は藤浪のスランプと大谷のメジャー移籍で、
さらにボクの興味を掻き立てた。
また、藤浪を印象づけるシーンとして忘れられないのが、
広島戦での相手投手に対する悪球だ。
藤浪は15年には黒田に2球際どい内角球を続け、
17年には大瀬良に死球を与えた。
2人の対応にはそれぞれ賛否があるようだが、
藤浪の目線で考えると大瀬良のケースがより辛いと思う。
逆転のランナーを背負ったエースが、
送りバントを匂わせる「打者」に対して内角を攻めるのはセオリー。
で、それがコントロールできていないと怒る黒田も、
負けられない「エース、投手、打者」として当然の振る舞いだった。
しかし、大瀬良が死球を受けたのは序盤2回の1アウト走者無し。
同じエース同士でリードを許していたとはいえ、
藤浪にとって四死球はむしろ自分の首を締めるケース。
だからこそ、大瀬良は藤浪に笑いかけた。
その口元は「大丈夫、大丈夫」と言っているように見える。
メジャーでも活躍した大投手と、同世代でしのぎを削るライバル。
その2人の対応から藤浪が何を感じどう成長するのか。
個人的に強く興味を惹かれる。
そして、絶好調の大谷と藤浪が同じ試合で投げ合って、
互いに三振の山を築き上げるシーンを観て、
勝ちも負けも忘れるほど陶酔したい。
そう強く願ってしまうのだ。