Spiral-World

めくるめく世界での個人的な日記

見えずとも

今年のホテルは部屋から東京タワーが見えない。

部屋の品質に不満はないのに、

どこか物足りなく感じるから不思議だ。

「部屋を変えろ」

ISMさんが懇親会の冒頭で冗談まじりに言ったら、

多くの代売店オーナーたちが賛同。

メーカー販社の担当者が変な汗をかく場面があった。

「思った以上にウケてびっくりしたよ」

焚き付けておいて無責任なことを言うのは悪いクセ。

そう釘を刺すと、笑いながら言った。

「当時、東京タワーができる瞬間を観てたワケでもないのに、

 なんでみんなこんなこだわるのかねぇ」

昭和の日本は開戦から敗戦を経て、戦後復興と経済成長に終始。

その絶頂期を挟んで迎えた平成では、

バブル経済崩壊と相次ぐ大災害という未曾有の事態に見舞われた。

その激動と激変の2つの時代にあって、

象徴であり続けた東京タワーに特別な感情を抱いても不思議はない。

「そうだよな。まさに『アイコン』だもんな」

神奈川を離れて18年。

住んでいた頃はろくに足を運ばなかった東京タワーに、

なぜか郷愁をそそられる。

懇親会を終えて戻った部屋で缶ビールを飲みながら、

小さく光るスカイツリーを見るともなく眺め、

昭和からも、あの頃の自分からも、遠く離れたと実感した。