Spiral-World

めくるめく世界での個人的な日記

難事件に終止符?

60年の時を超えて語り継がれる難事件が、

ついに解明されたのでは、とのニュースが流れた。

「ディアトロフ峠事件」は、

1959年2月2日、当時のソ連ウラル山脈北部で、

雪山登山をしていた男女9人が不可解な死を遂げたもの。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/21/020100052/

これまでにも何度か「事故」との答えが出されてきたが、

不十分との評価しか得られず、「未解決事件」として扱われてきた。

冬山登山をした一行は-30℃の極寒の中、

不可解にも服を脱いでいたり裸足で外に飛び出したとされた。

また、9人の遺体には争った形跡は無かったが、

頭蓋骨や胸部を激しく骨折していたり、

眼球がなかったり、舌が失われていたりした。

さらに何人かの犠牲者の衣服から、

高い線量の放射性物質が検出されたことなどで、

さまざまな憶測が飛び交った。

スイス連邦工科大学のプズリン氏とゴーム氏は、

今回の論文発表に際しコンピューター・シミュレーションを作成し、

登山者の命を奪った状況の再現に挑んだという。

その結果、事故の可能性が高いことを突き止めた。

まず、小規模雪崩によってできた雪塊が一行のテントを襲った。

彼らのけがは重篤だったが致命的ではなく、

雪に埋もれたテントから脱出。

全員がテント外で発見されていることから、

軽傷者が重傷者を救助したのだと推測。

9人のうち一部の遺体は衣服を身につけていなかったのは、

極寒で衣服を脱いでしまう矛盾脱衣という異常行動で説明できる。

放射能汚染が確認された遺体もあったが、

キャンプ用ランタンに含まれるトリウムの可能性が捨てきれない。

また、一部の遺体の眼球や舌がなくなっていたのは、

単に死亡した後、動物に食べられたせいかもしれない。

「この研究はすべてを説明しようとするものではありません」

ゴーム氏は言う。

謎多き出来事についての合理的な説明を試みたにすぎない、と。

そして、それは一般の人々には受け入れられないのではと危惧する。

事件発生から現在に至るまでさまざまな検証がなされ、

それをもとに多様な推測が繰り返されてきた。

そして、埋めきれない「謎」は、

超常現象や軍の秘密兵器実験などと結びつけられ、

新たな物語として際限なく膨れ上がっていった。

自然現象による事故との公的調査結果が、

これまでにも何度か出されているし、

昨年7月にはロシア最高検察庁も雪崩が原因との見解を示した。

にもかかわらず、多くの人がそれを信じていないし、

存命の遺族はこの結論には納得しておらず、

人為的な要因であろうと推測しているという。

人里離れた雪山で9人が死亡。

その悲惨な状況を語る生存者は存在しない。

たとえ奇跡的に一命を取り留めた生存者が証言したとしても、

多くの人はそれに納得せず、

今と変わらず憶測が飛び交ったはずだ。

「雪崩という説明では普通すぎるのです」とゴーム氏は言った。

多くの謎を含んだ