Spiral-World

めくるめく世界での個人的な日記

流麗なる筆調

ナショナル・ジオグラフィックでその写真を見た時、

押し花なのだろうと思った。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/042400249/?ST=m_news

しかし、それが手描きによるイラストだと知り、かなり驚いた。

さらに、その緻密な植物の描写は121枚に及び、

それぞれに関連する歴史的事実、現地での利用法や詩、

個人的な観察記録などが手書きで220ページも綴られているらしく、

さらに驚かされた。

この図鑑はA・K・ウルストンクラフトによる、

キューバの植物と果実の標本」。

1828年スペイン語の週刊誌で初めて取り上げられた。

それから約100年後の1912年、

キューバ人学者で思想家のカルロス・M・トレレスも言及している。

しかし、それ以外の情報は数少なく、どれも極めて不確か。

発見に至ったのはキューバ関連のものなら何でも収集するという、

元弁護士で歴史家のエミリオ・クエト氏の情熱あってこそ。

細い糸を慎重に手繰り寄せるように根気強く調査を続け、

190年ぶりにこの偉業に光を当てた。

ラッセル氏によると、

ウルストンクラフトは1828年に46歳で死去。

後には、書きかけの項目や下書きのメモ、

本に綴じられていない原稿などが遺されたという。

「彼女の仕事は未完でした。

 しかし、図鑑を見つけなければ、

 彼女が残した仕事が永遠に忘れ去られていたかと思うと、

 寒気がします」

そう語るクエト氏は現在、

ウルストンクラフトの業績を次世代へ伝えるために活動している。

彼女が第2の故郷としたキューバのマンタサスで墓を見つけ、

当時の地元新聞に彼女の名を探した。

多くの観光客が訪れる米国の首都ワシントンDCの国立女性美術館で、

発見したばかりの原稿を展示する計画を立て、

最終的にこの図鑑の出版も考えている。

「科学と芸術の分野から忘れられていた、

 新しい米国人科学者であり画家を発見しました。

 もっと長生きしていたら、

 きっとその世界では重要な存在になっていたでしょう」