「猫を棄てる」を読み終えた。
村上春樹さんの文章を読んで、
歳を取ったんだなぁと、なぜか実感した。
村上さんはこれまで家族について語ることは、
ほとんどなかった。
たとえ頻繁に語られていたとしても、
ボクはたぶん興味を持たなかっただろう。
それは、村上春樹さんの作風によるところが大きいと思う。
でも、この作品は読みたいと思ったし、
実際に書店で手に取って買った、久しぶりの書籍だった。
とても短く、あっという間に読み終えたが、
書かれていることの比重と密度はかなりなもので。
全体を通して淡々と書かれており、
文字面として大きな抑揚や華美さや過剰さはない。
ただ、村上さんのお父さんが生きてこられた足跡を辿るうえで、
取材や下調べに相応の労力と時間を費やされたことが、
文章のそこここでうかがえる。
その丁寧さがこの文章の重みを醸しているように感じた。
とまれ、この本を読んで、父と自分を重ねた。
そして、思った。
ボクも充分に歳を取った。