Spiral-World

めくるめく世界での個人的な日記

あの日の約束

「どうやって運ぶ?」

現車確認と軽い試乗を兼ねたツーリングから、

地元へ戻ったKYSと電話。

「まだ迷ってんだよ」

「迷うってことは、自走が捨てがたいんだろ?」

「かなりね」

そのバイクは北関東の販売店のモノ。

手っ取り早くて楽なのは業者に輸送してもらうこと。

たぶん、自走に掛かる経費と輸送費を比較しても、

驚くほどの差はないはず。

「楽がしたいなら、そもそもバイクに乗らないしな」

見透かしてKYSが笑う。

「メットやジャケットはオレん家に送っておけば良いし、

 店まではオレが乗っけていくけど」

「良いのか?」

「せっかくだ。初乗りにも付き合わなきゃな」

ボクが初めて新車のバイクを買った日のことを思い出す。

KYSは納車とその後のツーリングに付き合ってくれた。

そして、地元に帰ってすぐ、KYSの長女が産まれた。

「子どもたちが成人するまでは、乗らない」

ずっと守っていたその誓いを、

ヤツは一度だけ破ったことがある。

ボクが北海道へ移住してすぐの頃、

一緒に北海道を走った。

その後、KYSはまたバイクに乗り始めたが、

ボクは事故り大ケガ・・・。

「また一緒に走りたいな」

50歳を超えた頃に、そんな話をした。

その約束をようやく果たす事ができる。