ある時期までを口にできない言葉があった。
おはよう、こんにちは、こんばんは、
は自然に言えるが、
ありがとう、ごめんなさい、お願いします、が、
なかなか言えなかったのだ。
それは吃音とかの疾患ではなく、
習慣や自我の問題だったと思う。
反抗期の頃はワケもなく忌み嫌っていたが、
社会人となって否応なく、
それらの言葉を口にする機会が増えた。
それに従って、新たな問題が表出。
それらの言葉に「心がこもっていない」と、
気づいてしまった(笑)
特に経営者との役割を持つようになってから。
「ありがとう」
それがとても素晴らしい言葉だと教えてくれたのは、
元春だった。
20〜30代の頃はライブに頻繁に通っており、
いろんなアーティストの「ありがとう」を耳にした。
その中あってもっとも印象的だったのが元春。
曲の終わりごとにではなかったが、
アンコールの始まりや、
最後の曲を歌い始める前のMCで、
客席に向けて「どうもありがとう」と語りかけてくれた。
その表情と声がなんともカッコ良くて。
いつかあんなふうに自然に、しかも心を込めて、
「どうもありがとう」と言えたらなぁっと思った。
今やありとあらゆる場面で、一日に何度も、
ありがとう、ごめんなさい、お願いします、
と口にしている。
でも、あの頃に観たライブの時の元春のように、
それを聴いた相手の心が暖かくなるような、
「どうもありがとう」は一度も言えてないと思う。