「こんなに楽しい飲み会、いつぶりかなぁ」
NSMTさんがぼそっと言った。
「俺らみたいな下っ端と飲んでるのに?」
尊敬する先輩であり兄貴分でもあるNSMTさんに、
TORさんはどこかしらコンプレックスを持っており。
以前から何かに付けて自虐的な事を言っては、
からんでいた。
それを知ってか知らずかNSMTさんが軽く言う。
「上も下も無いじゃん。仲間なんだから。
せっかくの楽しい夜だし、そういうのは抜きね」
NSMTさんはボクらが暮らす町の名士。
町育てには欠くことができない存在であり、
芸術、文化、エンターテイメントなどにも造詣が深く、
著名人との交流も少なくない。
ただ、それ故にいつも特別扱いをされ、
誰とも腹を割って話せずモヤモヤが溜まるばかり。
さらに昨年は大病を患って手術も受けられた。
そんなこと察知して、
飲み会をと言い出したのがTORさんだった。
「年に1度は3人で飲みますか?」
お開きが近づいた頃にTORさんが言う。
「いいねぇ。だけど、次は送迎してくれる?」
お若く見えるがNSMTさんは70歳超え。
「あっ、じゃあオレも」
もうすぐ70代突入のTORさんも便乗する。
アラ還でパシリ扱いされるのはどうかと思うが、
その相手がこのお2人なら喜んで。
そう思える人たちと出逢えて良かった。