KYSと飲んだ。
先月、奥さんの三回忌にと思っていたが、互いに予定が合わず。
気持ちの整理がついたとは到底思えないが、前向きに楽しく生きようとしているのが、話から伝わる。
テニスやバイクや音楽や映画など、いつものように、共通の趣味の話題で盛り上がった。
ん? 映画? 話題にするほど好きだったっけ?
「それがさ、最近よく映画館へ観に行くんだよ」
「え? マジで? お前が映画館?」
「おう。この前さ、『ボヘミアン・ラプソディ』へ行ったんだけど、思った以上に良かったわ」
あ? それもクイーン? しかも、やたらうれしそう。
あ。なるほど。ほう。ほほぅ。
ニヤつくボクに気づいて、ヤツが旧に照れる。
「あ、ま、なんだ、ほら、その、な」
昔からウソや隠し事が苦手。つーか、どヘタクソ。
「ふーん」
「そういうじ、時間が、できたから」
「うんうん。気持ちと時間的な余裕ができたんだね。で、クイーンの映画を観たと?」
「お、おう。なんか変か?」
かなり変だろう。四十年の付き合いの中で、お前からクイーンの話題が出たことが一度もないもの(笑)
「だ、だから、な。ほら、さ」
いいじゃん。いいじゃん。誰と行ったかは訊かないよ。
「そんなに良い映画だったんだ?」
ニヤニヤしながらワインをのんでいたら、右腕にパンチが飛んできた。
「ほら、せっかくいつもより高いワイン用意したんだから、さっさと飲め」
KYSのうれしそうな顔を久しぶりに観られて、ボクもうれしくなった。