「怒ってなんかないって。ホントに」
TMICRさんは何事もなかったように笑う。
でも、怒っているのが分かる。
いつもは心優しく面倒見の良い大先輩は、
まれにへそを曲げるが、
怒れば怒るほど怒りを隠すクセがある。
「俺もいい歳だし。
若い人たちにバトンタッチしていかないと」
TMICRさんに限らず多くの御年配者が口にするセリフ。
それは多くの場合本音だ。
でも、それが「今すぐ」かどうかはデリケートな問題。
だから、それを他人が判断するってのはかなり難しい。
免許返納と同じだ(笑)
所属している同じ団体で近いうちに役員編成があるのだが、
TMICRさんが辞意を表明したところすんなりと受け入れられ、
方や同年代の他の役員は慰留されたと言う。
それが、編成後に発覚したならまだしも、
当のお2人が口裏を合わせ一緒に辞めようとしていたから、
ややこしくなった。
自分で辞めたいと言った。それは揺るぎない事実。
それはご本人もよーく分かっているが、寂しいのも事実。
その葛藤が怒りをより増幅させている。
「とにかくそういうことだから。お世話になったね」
そう言うと引き止めるのも聞かずさっさと帰ってしまった。
こりゃ、ひと悶着起こりそうだ。